大変長らくお待たせいたしました!
深淵歩きアルトリウス 1/6スケールスタチューが2023年12月14日正午よりご予約開始となりました。
こちらの写真は開発段階のもので、金型を使った1回目のテストショットサンプルです。
ところどころ色が違うのはパーツを分割してあるからで、こういった写真を公表する機会は少ないので、貴重と言えるかも知れません。
これらは原型を製品に落とし込むために分割されたパーツ構成で、順に「頭・上半身」「左右の腕」「下半身」「腰回りの装備」「アルトリウスの大剣」「台座」となります。
細かなディテールをあますことなく再現するために分割しているというのもありますが、彩色する際に塗装したパーツを組み立てることで、色のハミ出しや塗り残しを無くす効果も狙っています。
特に上腕内側のベルトように鎖帷子の凹凸にかぶさるパーツは、こうすることでシャープな塗り分けを可能とします。
組み立て工程は恐ろしく手間が掛かりますが、パーツ同士が重なりあう部分や、原型師さんが丹精込めて作り上げた精細なディテールを徹底的に拾い上げることができます。
Gecco製DARK SOULSスタチューでは恒例となった「本物と同様に編み込み、原型に貼り付けた鎖帷子」も、ダメージを受けて千切れたり、深淵の闇がべったりとまとわりついた表現まで再現しているが見て取れます。
これらの工程により、アルトリウスの原型は全20パーツだったのに対し、製品は4倍近い75パーツとなりました。
もしコストを下げることを重視するならば、これらとは真逆の選択で分割を最小限に留め、パーツを減らさなければなりません。
ただそれでは高いクオリティを目指すことなどできませんし、折角身銭を切ってお買い求めいただくのにショボい製品になるようなことは避けたいと考えています。
精細なディテールの再現やアルトリウスらしさを醸し出すポージングなど、外観から伝わる情報だけでなく、内部構造にも徹底的にこだわりました。
俗にいうインジェクション成形は、大きく分けてPVCと呼ばれる素材と、ABSという素材
を使うことが一般的です。
前者は細かなディテールを再現するのに優れる反面、熱により変形しやすいといった性質を持ち合わせています。
後者は硬い素材なのでよほどのことがない限り変形することはないのですが、細かな凹凸
などの再現には不向きと言えます。
この写真はABSを使ったパーツ群で、長期間の展示に耐えられるよう、アルトリウスの体躯を支えるのに貢献しています。
まずは上半身。
大きな塊をPVCで成形しようとすると、ヒケと呼ばれる収縮や、肉厚な部分が変形してしまうといった問題が起こるケースがあります。
そこで内部を別パーツとし、ABSで作った「内部骨格」を作りました。
まず内部骨格を成形し、前後でネジ止めを行います。 それを胴体の外観を再現した金型にセットしなおして、まわりをPVCで覆うように成形します。
これをインサート成形と呼ぶのですが、ひとつのパーツで2回成形しなければならないものの、中に硬いABSを仕込むことで変形せず、繊細なディテールも再現することができるようになります。
次に右腕です。
右腕は大剣を抱えるために、思いのほか負荷が掛かってしまうパーツです。
特に折れ曲がった肘を変形しないようにするため、上腕部に太めの内部骨格を入れ込みました。
そして手首も大剣をしっかりと保持できるよう、接続用の軸をABS製にしてあります。
その大剣も、ご覧のように内部骨格を仕込んであります。
シンプルな直剣であれば剣そのものをABSで成形するのですが、大振りでボリュームがあり、しかも細かなディテールや深淵に侵されダメージを追った大剣なので、これもPVCで成形するほうがベストと判断しました。
ただし、PVCのままではフニャフニャと曲がってしまいかねませんので、ここにも硬い骨を仕込む必要があります。
そして特筆すべきはこの下半身の内部骨格です。
アルトリウスを代表するといっても過言ではない、上半身を屈めたポーズを支えるためには、より強靭な下半身が必要となります。
例えまっすぐに立ったポーズでも、変形防止のためにGecco製品は脚をABSそのもので成形したり、インサート成型をするようにしています。
前屈みになった上半身をしっかりと支え、且つ決して変形することのないようにするため、通常では考えられないほどのボリュームの内部骨格を作りました。
「他のパーツと同じで、骨になるパーツを作っただけでは?」と思われるかも知れませんが、ABSは体積のあるパーツには不向きという性質があります。
上半身でも説明しましたが、体積のあるパーツは収縮を起こしやすく、中でもABSは塊になればなるほどヒケや変形が起きやすくなります。
それを特殊な成型方法を行うことにより、ヒケや変形の無い構造としました。
まわりをPVCで覆うことで見えなくなる内部骨格ですが、やはりここで手を抜くとちゃんとポーズが決まらなかったり、後々バランスが崩れ、前に倒れ込んでしまうかも知れませんので、疎かにすることはできません。
もちろん脛や靴底、台座の裏側に至るまでABS製の骨格やフタを設けてあります。
ここではゲートについて説明します。
プラモデルを作ったことのある方ならご存じだと思いますが、インジェクション成形にはランナーと呼ばれる樹脂の通り道があります。
そのランナーとパーツがつながる部分をゲートと呼んでいます。
成形したパーツをゲートから切り離すのですが、その際に誤ってパーツのディテールまで切ってまったり、逆にゲートの一部がパーツに残ってしまうことがあります。
丁寧に作業すれば済むことなのですが、工場で働く工員さんも人間なので、うっかりミスをしてしまうことがあります。
そのミスを物理的に無くす方法として、組み立てた後に隠れて見えなくなる場所にゲートを設けるようにするのですが、これが必ずしもすべてのパーツに行えるとは限りません。
そこでアルトリウスでは、ゲートの処理が難しいとされる小さなパーツ群を、特殊なゲート(弊社ではサブマリンゲートと呼んでいます)で成型します。一般的に設計されるランナーの通り道を外れて遠回りして(金型の内部に潜り込ませる)、目立たない場所にランナーを設置します。
これもすべてのパーツに使える技法ではないのですが、接着後に絶対に見えなくなる場所…つまり接着面そのものにゲートを設けるようにしています。
これで些細なミスとはいえ、大切なディテールを誤って切り落としてしまうようなことは避けることができます。
また、大剣のディテールをABS製の小パーツに分割したことで、接着後は大剣の側面をABSでサポートすることになり、より強固に変形を防ぐという恩恵を得ることができました。
原作の素晴らしさを再現するために造形や彩色にこだわることは、フィギュアを作るうえでスタート位置でしかありません。
決してお安い買い物ではありませんし、好きなキャラクターたちを少しでも長く楽しんでいただけることも、Geccoは大切なことと考えています。
原型や彩色、製品に至るまで「究極のアルトリウスを目指す」ことにこだわったスタチューを、是非ご予約ください!
製品情報はこちら→https://gecco.co.jp/product/artorias-the-abysswalker/